「嗅覚」を使った体験をしてみよう
横浜市旭区にある「子ども自然公園」でフィールドワークを行いました。
暦上では、すでに冬ですが (11月8日立冬)
かぐわしい香りを放つ植物や色鮮やかな草花が少しずつ減ってきて落ち着きのあるトーンに変化してきた景色、木陰の中で感じる肌寒さでやっと冬の到来を実感することができます。
この時期のフィールドワークになると、「見るものが何もない」「寒がって活動にならない」といった、植生の少なさや寒さを理由に、活動を敬遠しがちです。
ですが、五感を働かせることで、自然から得られる気づきはたくさんあります。
「嗅覚」を使った体験をしてみよう
公園内で見かける特徴的な形の葉。
日当たりのよい場所に生えていることが多いようですが・・・
やや日陰の藪の中でも生えています。
★問いかけてみよう★
①どんな形の葉っぱがあるだろう?
②葉をさわってみよう。手にどんなニオイがついただろう?
そんな問いかけから、冬のフィールドワークのワクワクが始まります。
そんな問いかけから、冬のフィールドワークのワクワクが始まります。
葉にふれると手に独特なにおいがつきます。
どこかピーナツのような香ばしい香りともいえます・・・一般的には悪臭といわれています。
ですが、気分が悪くなるようなにおいではありません。
臭い木であることから「臭木」⇒「クサギ」という名前がついています。
人によってにおいの感じ方は様々です。
ぜひ、においについてそれぞれの感想を伝えあってみてください。
開花時期(7、8月)にはきれいな花が咲きます。
クサギという名前に反して、香りがよく、ほのかにユリやジャスミンの香りがするそうです。
「どうして花になると香りがよくなるだんろう?」
「どうしていろいろな場所に生えているんだろう」
そんな問いかけも、子どもの思考を促すことにつながります。
「味覚」を使った体験をしてみよう
第1駐車場の売店横に、カーブミラーと共に立つ一本の樹木があります。
枝を折って、内側の部分を歯で「カチカチ」咬んでみると、何とも苦い味が・・・・。
大人ならどこかで口にしたことのある苦み・・・・。
この苦みも、決して気分が悪くなるような苦みではありません。
子どもに体験させることは難しいかもしれませんが・・・・・(でも、体験させても支障はありません)
教師の方は、ニガキをみかけたらこの苦味を体験してみてください。
五感を使うことで、知識がより一般化されます。
現代に生きる生活の知恵
ここまでクサギとニガキを紹介しました。
苦い、臭いという特徴だけ聞くと、害悪な印象が強くなってしまいますが・・・
実は、クサギとニガキの特性は、昔から生活の中で活用され、現代でもその知恵は生かされています。
食用に使われるクサギ
暑さ寒さ強く年中どこでも育つことから、食用として使われています。
クサギは北海道から沖縄まで全国に広く分布しますが、メインの食材として食べられる地方は限られています。
江戸後期に編纂された『紀南六郡志』によると、和歌山県では一度地上部を刈り取り、翌春に土から出てくる新芽を高級山菜として扱っていたという記録があります。ほかにも、北陸地方には大豆などと煮込む伝統料理法が伝わっています。
また、岡山県の山間部では、春の新芽を湯がいて乾燥させたものを、植物が少ない冬までの年間保存食にしていました。そして、これを活用した「クサギ菜飯」は、今でも盛んに食べられる郷土料理です。
生薬に使われるニガキ
剥ぎ取った樹皮を乾燥させることで生薬の「苦木(ニガキ)」となります。主に苦味健胃薬として用いられています。
苦木は,ほぼ国内で自給できる生薬で,長野・群馬などの各県から年間25トン程度産出し,もっぱら家庭薬原料とされています.6〜7月ごろ小木を切り樹皮を取り除いて調製しますが,樹皮を混入しない苦みの強いものが良品とされます.
総合胃腸薬とし有名な「大田胃散」の中にも、ニガキ末(粉末にしたもの)が含まれています。
また、昔は農薬としても使われていました。
薬用部分である木部だけでなく、葉や樹皮など全てが非常に苦いことから、そのままニガキ(「苦木」)と名付けられました。かつてはニガキを煎じたものが家畜や農作物などの殺虫剤として使用されていました。現在では化学合成農薬が主流とはなっていますが、天然素材であるニガキを利用した農薬は、昨今再び注目を集めています
見えないものが見えてくる
いかがでしたでしょうか。
今回は冬のフィールドワークで見られた「クサギ」「ニガキ」を紹介しました。
五感を使うことで、目だけでは見えないものがたくさん見えます。
樹木や野草の種類は上げたらキリがありません。公園にあるたくさんの植物を覚えることを目的としたフィールドワークは楽しくありません。
見えないものを見つめられるって、人の思いに気づくことにもつながる・・・、深い思い・考え、育てたいですね。
たった一つの樹木や野草でも、目だけでは見えない中に潜む(ひそむ)、そのもの良さが見えてきます。