第65回造形教育大会に参加しました

7月23日(土)に横浜みなとみらいにあるワールドポーターズにて「造形教育をもりあげる会」主催の第65回造形教育大会が開かれました。
今回、槇の会講師の髙橋先生が、本大会のワークショップブースを出されるとのことで、槇の会も先生の手伝いとして参加しました。

「造形教育をもりあげる会」とは

“1957年から65年目を迎える伝統ある造形教育の研究会です。幼稚園・保育園・小学校・中学校・高等学校・大学・造形作家等、造形教育にかかわる仲間や造形活動に携わる同志により築き上げてきた研究会です。
 子ども心を大切に、子どもに寄り添い、明日を生きる子どもたちを育てる研究会です“

【引用元】  造形教育をもりあげる会

過去2年間、新型コロナ感染症の影響で造形教育研究大会は中止になってしまったとのことです。今年度も感染症の拡大で開催が危ぶまれましたが、感染症対策の徹底やプログラムの見直しにより、無事に開催されました。会場には多くの保育園や小学校の先生、高校の先生方も参加していました。

自然材のおもちゃ~髙橋先生とともに~

研究会大会は、ワールドポーターズ6階のイベントホールで行われ、会場内には「ぺんてる」や「開隆堂」など造形教育関係の会社のブースもありました。髙橋先生のブース(五感教育研究所のブース)も分科会の後方に開き、竹やクルミなどの自然材を使ったおもちゃの体験ができるようにしました。

槇の会はワークショップ打ち合わせの段階から参加しました。自然材を使ったおもちゃで来場者が実際に遊ぶことで、楽しさやさわり心地、教育的意味・効果等に気づいてもらえるようにしました。

また、今回はじめて髙橋先生が作っている自然材を使ったおもちゃを有料でお分けすることになりました。多くの方に手にとっていただき、それぞれの現場にいる子どもたち、特に困っている子どもたちに使ってほしいと思いを込めて、有料でお分けすることになりました。

今回のおもちゃは、①松風ごま ②竹返し ③竹のぶんぶんごまの3種類を用意しました。袋の中には、それぞれのおもちゃの『使い方』、『作り方』、『教育的効果』について書かれたコメントも同封してあります。作り方や使い方、教育的効果等の一部を最後に紹介します。詳細については、今後会員向けページに随時アップします。楽しみにしていてください。

直にふれる やってみる・・・やはり大切

1時間に満たない限られた時間でしたが、多くの方に立ち寄っていただき、それぞれのおもちゃを体験してもらいました。「これは何?!」「はじめて見ました!!」「おもしろい!」「楽しい!!」等の声があがり、多くの方に興味をもっていただきました。

自然材を使ったおもちゃにふれて遊んでもらったり、竹を切ってもらったりすることで、それぞれのおもちゃの手触りや自然材の香り、切ったり削ったりしたときの感覚を味わうことができます。自然材を使ったおもちゃ遊びを体験することで『五感』がはたらき、脳に複雑な刺激が与えられます。現代の生活では、自然には得られなくなった脳への刺激を得ることができます。

幼少期に似たような動作の体験をしている方は、初めはうまくいかなくても、早く順応していきます。

例えば、「竹がえし」。遊び方の一つとして、手の甲に乗せた15センチほどの短い竹の板を軽く投げ上げ、落ちてきた竹の板をタイミングよく掴む遊びがあります。はじめは1本。成功したら、2本、3本・・・と徐々に本数を増やしたり、利き手と逆の手を使ったり、手に握るところから始めたりと遊び方を多様にアレンジすることもできます。この遊びが促す発達は、目と手の協応(目の動きに手の動きを合わせる力)です。

挑戦した方は、はじめはうまくいかったのですが、手の甲への竹の乗せ方や投げ方を試行錯誤し、繰り返し挑戦することで、ほとんどの方が1本、2本・・・と成功させていきました。

その中に、印象的な方がいらっしゃいました。

はじめは失敗していましたが、やがて5本の竹返しをあっさりと掴んだご婦人です。
「ほら、できたでしょ!!」と心の声が聞こえてくるかのようでした。
「子どものころ似たような遊びしてたよね。」と上手に竹返しを繰り返す・・・。
同じ遊びはやったことがないけれど、小さいときに遊んだことが体の記憶として残り、難なく応用できる。幼少期の五感体験で培った能力は、一瞬にして引き出され、いくつになっても備わっていて、再起動・応用がきく。幼少期の五感を通した体験が脳と体の機能を発達させ、機能させるとは正にこのこと!!すごい!!

「手先が不器用な子ども」は、この遊びが簡単にはできません。

そして、そういった子どもは、自己効力感(自分ならできると信じる力:アルバート・バンデューラが提唱した概念「self-efficacy」「自分の能力を信じる気持ち」という意味。自分ならできる、きっとうまくいくと思える感情です。)が低く、壁に直面したときには、試行錯誤を繰り返さず早い段階で諦めてしまいがちです。

だからこそ、一人一人のもてる力を十分に発揮させるために、幼少期の五感体験は欠かせないものなのです。
そして、こうした不全感を募らせる子どもたちを救うためにも、遊ぶだけで「複雑で多様な刺激を与えることができる自然遊び」を取り入れることは、苦しんでいる状態を緩和・解消するためにどうしても必要なのだと、改めて痛感しました。

例えば台湾では、法律を改正し、外遊びを2時間するよう目標を掲げています。これは、屋外で光を浴びることを目標にした内容ですが、遊びが子どもの機能面での成長(脳の発育発達)に大きく影響していることがわかる話です。(今後、関係する記事をアップできればと思います)また、髙橋先生が長年伝えてきたことであり、私たち「槇の会」が目指していくところでもあります。

子どもたちの成長を促し、持てる力を発揮させることに携わっている方々には、ぜひとも知っていただきたいことです。そして、ぜひとも取り組んで頂きたい活動です。そして、一人でも多くの困っている子どもたちを救って欲しいと願っています。

やっぱりおもしろい

今回、たくさんの方におもちゃにふれていただきましたが、高橋先生は、今回紹介していないおもちゃも数多く持っていらっしゃいます。そして、実践化しています。

参加している方が、自然材のおもちゃで遊ぶ様子をみて、改めて「髙橋先生が作ったおもちゃはおもしろい!!」と再認識しました。

スマートフォンやゲームは、刺激的で夢中になれるように作られています。しかし、それが、発達過程にある子どもたちにとってどのような意味があるのかを大人が分かって与える必要があります。

私もゲームは好きですし、スマートフォンは欠かせない存在です。決してそれらを否定するものではありません。

でも、電子機器を使ってするゲームは「子どもの脳と体の機能を十分に成長させることは難しい」と言うことも忘れてはいけないと思います。諸外国では、今の子どもの発育発達に問題意識をもち、台湾のようにエビデンスをもとに教育活動を見直していることも事実です。

昔からある「遊び」や「遊び道具」は昔からあそび続けられてきた訳があるのです。

その訳を知ることが、今の子どもの困り感に寄り添い、意欲的に学習し、生きる力を育む上でどうしても必要なものであることを皆さんに知っていただきたいと思います。

今後も槇の会では、髙橋先生を講師に、自然材を使ったおもちゃ遊びや屋外でできる遊びとその意味について発信していきたいと思います。

今回ワークショップで紹介したおもちゃ・遊び

1ぶんぶんごま (材料:竹 タコ糸1.5mm)

こまを回した時のブーンブーンと言う音から名がついている。紐の先端を人差し指にかけて持ち、両外側に引きながら繰り返し振動を与えて回していきます。二人で両端を片方ずつ持って、協力して1つのこまを回すことも楽しいです。ちょっとだけ難しい。だけど誰でも必ず回せます。だから夢中になれる。特別な支援を必要としている子どもたち、幼児、低学年の子どもたちから大人まで回せたときの満足感・達成感を味わえます。竹をさわるだけで複雑多様な刺激が脳に伝わります。牛乳パックやプラスティックなどの人工物では発生しない刺激です。そして、夢中になって繰り返し試行錯誤しながら回せるようになるまでやります。できるまでやり続け、主に手と目の協応性をおおいに働かせ、目・手・脳の機能を高めます。
<育む力や状態>
思考力・判断力 協調性 自己対話能力 コミュニケーション能力 目と手の協応性 情緒の安定 自分を自分で認める力=自信 克己心 目・手指の機能回復・向上  などなど

2松風ごま (材料:クルミのから タコ糸1mm)

北風がヒューンヒューンと鳴る音に似た音が出ることからこの名がついています。紐の先端を人差し指にかけて持ち、両外側に引きながら繰り返し振動を与えて回していきます。二人で両端を片方ずつ持って、協力して1つのこまを回すことも楽しいです。ちょっとだけ難しい。だけど誰でも必ず回せます。だから夢中になれる。

3竹返し (材料:竹を割いた板)


お手玉遊びに似た遊び方です。竹の棒を先ずは1本握ります。握った手を下に向けて少し竹の棒を投げ上げる気持ちで手放し、もっていた手の甲に載せます。乗ったら成功!!徐々に竹の棒の数を増やし、手の甲に何本無事に載せられるか競います。

4タラヨウの葉のメッセージカード (タラヨウの葉 毛糸やリボン)


タラヨウの葉は、葉書の語源になった葉です。その葉の裏に、楊枝などの先がとがった棒で傷をつけるように文字を書くと、見る見るうちに茶色~黒色に変色し、文字が浮き出てきます。葉っぱの周りにパンチで穴をあけてリボンや毛糸を通してメッセージカードに。青と水色の毛糸で夏を赤と緑でクリスマスの季節を感じられる季節の遊びです。

 

5 松やにのジージーゼミ 
 (直径2cmほどの柳の枝を30cmくらいの棒にする 松やに タコ糸 工作用紙 クラフトテープ)

柳の木を30センチくらいの棒にして持ち手にします。柳の棒の先のほうにひもが回せるように幅2センチほどのくぼみをぐるりと作ります。その棒のくぼみに松やにを溶かしつけて棒は出来上がり。その松やにがついたところにひもを付けた鳴子をつけて回すとジージーとセミの鳴く声が聞こえてきます。

 
6 うなり木 (クラフト紙でできた板 回転金具 タコ糸 針金)


厚さ3mmほどのクラフト紙板を写真のような形に整え、金具をつけて回しても糸が絡まないようにします。糸の先端をもって頭上で回すか、体のわきで縦に円を描くように回すと、低い音でブーーンブーーンとうなります。

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